特集 第10回社会医学研究会
自由集会(世話人まとめ)
公害訴訟における法と医学の問題点
吉田 克己
pp.689
発行日 1969年12月15日
Published Date 1969/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203993
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今日公害問題によって直接的にその被害者となって苦しみ,あるいは死に至った悲惨ないくつかの事例が存在している.このような問題に対する救済措置が,あまりにも不十分であり,このために法に基づく加害者への直接的な求償請求の要求が提起されている.その代表的なものとしては,四大公害訴訟といわれるところの阿賀野川メチル水銀中毒,四日市喘息,イタイイタイ病,水俣病の4つの求償訴訟があり,また,サリドマイド事件や,その外に数多くある騒音,振動その他の健康障害をめぐる訴訟問題も公害における私法的救済を目的としており,また同時にこれらの訴訟は単なる被害者の救済ではなく,公害対策そのものの抜本的強化を実現することをめざすものといえる.
このように,いわゆる公害訴訟は単なる少数の被害者の救助を目的としたものではなく,公害問題の基本的な排除,健康障害の抜本的解決をうながす1つの社会的手段としての意味が大きいが,同時にこれが法に基づく争いである以上,その訴訟維持に当たって科学的な準備,特に医学的因果関係の問題が大きな地位を占めることは当然であるといえる.この点で,法と医学の考え方を相互に調整して行くことが必要となってくる.
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