特集 地域開発と住民の健康—(社会医学研究会特別報告)
5.四日市工業地帯—地域開発と公害問題
吉田 克己
1,2
,
大島 秀彦
1,2
,
小川 節子
1,2
1社会医学研究会中京ブロック
2三重大公衆衛生
pp.605-608
発行日 1963年11月15日
Published Date 1963/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202748
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今日,日本のおくれた地域,繁栄からとり残された地域の人々の願望は,工場誘致であり,地域開発だといわれている。今日,地方の人々にとっては多くの場合,地域開発と工場誘致は殆ど同意語のように理解されており,事実,京浜,阪神,北九州地帯を除いた殆どの地域での,地方自治体の政治的目標は工場誘致であったし,東京その他の所謂,過剰地域からは考え難いようなムードが,地方の政治的日標をとらえてきた。
「高度経済成長」乃至は「所得倍増計画」の具体的内容としての所謂,拠点工業基地建設が,地元民に多くの思わくをふりまいてきたことは事実であり,今日においてもそうであるが,しかしこれに必要な港湾,工業用水,道路その他の公共投資を地方自治体に押しつけ,進出企業は更に多くの税法上その他の特典をもちながら,一方において自からの工場投資は生業採算性の観点から行なわれ,都市計画その他の考慮が殆ど実現されず,結果としての,完全なまでの「衛生学的無秩序」というものが,その地域社会を支配したところに基本的な問題点が存在しよう1)。
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