海外の医学教育
イギリスの医学教育(1)
森 亘
1
,
北川 正信
2
1医歯大病理学教室
2東大病理学教室
pp.578-582
発行日 1969年10月15日
Published Date 1969/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203963
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はじめに
一国の,特に他国の医学教育について紹介し,あるいは意見を述べることはなかなか難しいものである.たとい,その土地にかなりの期間滞在していた人であっても,私どものようにそこでの主目的がむしろ研究であれば,実際に見聞する範囲も根拠地を中心としたきわめてわずかな,限られたものに過ぎなくなる.偏見,あるいは故意の歪曲は論外としても,このような個人の限られた経験では,たとい1つ2つの事例を挙げるには十分であっても,一国の医学教育全体の紹介文を書くにははなはだ不十分と考える所以である.かくして,2名の考えを綜合すれば,1名のそれに比べて多少ともましであろうかと,1966年から67年にかけての1年間をケンブリッジで過ごした森と,現在ロンドンに滞在中の北川両名の意見を合わせて,ここに簡単な紹介文を書くこととした.なんらかのご参考になれば幸いである.
オクスフォード,ケンブリッジの両大学はある意味では英国における大学の代表である反面,別の意味では例外でもあるように思われる.中でも,しばらく前に臨床面を整備し終わったオクスフォードに比べて,いまだに臨床教育をほとんど行なわないケンブリッジは,さらに例外であろう.しかし,実はこれこそ英国における医学教育の真の姿であるのかも知れない--すなわち,基礎ならびに臨床教育の分離,あるいは独立とも考えうるであろう.
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