人とことば
公害行政を担当するにあたって
金光 克己
1
1厚生省環境衛生局
pp.61
発行日 1969年2月15日
Published Date 1969/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203814
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現代のわが国における公害問題の解決は,困難ではあるが緊急に対処しなければならない国民的課題の1つといえる.私は,昨年6月以来,厚生省における公害行政を担当しているが,公害行政はきわめてむずかしい分野の行政であることを痛感している.その困難性を行政的にみると,公害はまことに広範な分野の活動と関連し,しかもその活動は,いずれも現代の人間生活にとって必要不可欠なものであるということにある.たとえば,大気汚染の主な原因の1つとされる火力発電をとってみても,経済的かつ効率的な水力発電用のダムサイトを求めることが,困難となってきた現在にあっては,逐年増大していく電力需要に応ずるためには,社会的な要請としてもその建設や増設を拡充していかなければならないし,また,排気ガスによって都会の空気をよごしている自動車の増大にしても生活水準向上の象徴ともいうべきマイカーや,生産や流通の拡大に伴う輸送量の増大など,社会的,経済的な要求に基因していると考えざるをえない.
さらに保健福祉の見地からみた都市の市民の生活水準は,生活環境整備の立ちおくれの事情とも相まって相対的な低下の傾向を示しているにもかかわらず,都市への人口や産業の集中はなお依然として持続しており,それがいわゆる都市公害発生の主な要因の1つともなっている.
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