特集 綜合保健活動と保健従事者
綜合保健活動と教育機関—北里大学における新しい試み—その現状と将来像
沼田 岳二
1
1北里大学衛生学部
pp.452-459
発行日 1965年8月15日
Published Date 1965/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203088
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■まえがき
北里研究所が研究の場であり,またワクチン製造所であることは知られているが,戦前数十年にわたって純然たる保健従事者養成所としての一面を持っていたことを知る人は今日極めて少ないと考える。北里柴三郎は伝染病研究所長時代に細菌学を主とする公衆衛生学の学理と実技に関する講習会を開き,年々多数の卒業者を世に出していたがこの講習会は北里研究所創立後も全く同じ形で継続され,支那事変迄続けられた。聴講生は医師を主とし,他に歯科医師,獣医師を対象としたかなり高度のもので,今日のpost graduateの教育であった。
その後時代の推移と共に単なる伝染病予防を目的とする講習会は次第にその存在理由を失うと共に,支那事変などのため廃止するに至ったが,公衆衛生学の啓蒙あるいは教育方面に関する意志は連綿として流れていた。このことは生前において慶応義塾大学医学として現れたが,その没後も昭和32年に2年コースの北里衛生科学専門学院が創立され,これは往時の講習会が再現したと見られるもので,続いて37年には4年制の新制大学である北里大学衛生学部となり,更に39年には薬学部が新設されるに至った。以上,北研がかかる学部を創立した事は偶然でなく,由って来たるところは北研に流れている公衆衛生学教育に対する熱意に他ならないと了承されたい。
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