特集 綜合保健活動と保健従事者
綜合保健活動と教育機関—東京大学における新しい試み—その現状と将来像
島薗 順雄
1
1東京大学医学部
pp.447-451
発行日 1965年8月15日
Published Date 1965/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203087
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■保健学科開設の趣旨と経過
本年4月から,東京大学医学部に保健学科が設置され,また大学院保健学専門課程が開設された機会に,設立の構想,経過と将来像について,医学部長および人学院系の委員長としてその開設計画の衝に当った私に執筆の依頼があったので,ここに大要を記すこととした。
私どもは医学教育の改善と向上のために種々の方策を検討してきたが,現在では傷病の予防や健康の保持増進が医学においてその比重を増しつつあることを認めざるを得ない。医学科が一本の授業を行っている現状では,保健学専門家に対する現代社会のこの要請をみたすために,医学科とは別に保健学科を設けることが必要であると考える。医学科は臨床医学と基礎医学との教育に重点を置いているので,その4年間の課程では保健学の専門家を養成するのに十分な授業を課することはできない。医学科卒業後,保健学を専攻させるためには,大学院教育を必要とするが,学部教育6年ののちに更に保健学の大学院課程をおいて系統的に専門の教育を行うことは,わが国の現状では多数の専門家養成のためには困難が多い。むしろ大学教育4年間で一応の保健学の専門を身につけさせた上で,大学院希望者のために保健学修士課程,博士課程に進み得る道を開いておくのがよいと考える。
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