特集 農村の保健
主題
農村保健の課題と対策—高度経済成長下の農民の健康障害を中心にして
若月 俊一
1
1佐久総合病院
pp.188-194
発行日 1965年4月15日
Published Date 1965/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203022
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■変貌する農村・農家・農業
現在,農村は急速にそのかたちを変えている。第一,最近の高度経済成長は農業人口を著しく流出させ,いわゆる「地すべり」的変動をひきおこしている。特に若い世代の流出が大きな問題である。次に農家のはげしい兼業化の増大である。その中で,古い農村の封建的ななごりがぬぐい去られたとはいえないが,新しい村の近代化への道がどんどん進められている。農家の生活も,古い「家」の制度は解体しつつあり,近代的な家族関係が急速に芽生えている。資本主義的な考え方,賃労働者的根性も急速に伸びつつある。昔からの「四つん這い仕事」の零細な経営から,機械化,共同化への新しい努力が始まっている。
しかし,こうした新しい姿にもかかわらず,他面,貧しいもの,お粗末なものが依然として内部に残っているのはどうしたことか。--そして,それが,今日農村民の健康をむしばんでいる元兇のように思えるのだ。それは,農村の変貌が成長した自分の力で自然になされたのでなく,いわゆる高度経済成長の工業本位の施策の中から,いわば外部の力によって「ムリになされた」ためではなかろうか。
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