特集 農村の保健
僻地の保健問題にどう対処するか
柳沢 文德
1
,
松崎 泰夫
1
1東京医科歯科大学農村厚生医学研究施設
pp.195-199
発行日 1965年4月15日
Published Date 1965/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203023
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はじめに 僻地という言葉の定義づけによって,問題の解釈が多少ちがってくる。かってのわが国では,城下町,商業・鉱業発展地区以外は田畑または森林であって,このような第一次産業中心地区はみなしいたげられた農民のあつまりで成立したのであった。農林業地域と僻地とは縁の深いもので,たとえば広辞苑をひけば「都に遠い土地」となっており,いわゆる田舎である,今次大戦後は第一次産業地区の様相も著しく変わった。僻地の定義づけとして,行政上からみて,その性格を端的にしめしておるのが「隔遠地手当支給官署の指定基準―人事院」であろう。文部省の「へき地教育振興法」もこれに準じたものである。この内容を詳しく述べる余裕はないが,簡単に表現すれば,交通条件および自然的・経済的・文化的諸条件に恵まれない地域となる。僻地というところは,人の住居に不利なところであるわけである。必然的にその地域住民もとくべつにめぐまれぬ生活をはじめからよぎなくされておる。とうぜん健康についても好ましくない。都市と対比すれば,公害問題が少ないという以外に,生活としてすぐれていることはない。山奥の村であっても,歩いて1〜2日以内に,その地方の一つの中心的都市に出られるが,離島になったら,船が島にこないかぎり,都市には近づけないというくらい,離島は文化から隔絶されている。かつて,東京都下利島に調査にいったが,船が寄港しないために2週間の滞在をよぎなくしたという経験すらある。
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