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後藤新平の衛生観—巻頭・人籟によせて
小野寺 伸夫
1
1北上保健所
pp.36
発行日 1965年1月15日
Published Date 1965/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202976
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- 文献概要
衛生行政の先輩として,後藤新平の名は高く評価されてよいが,さらにその識見に先見的なものがあり,現代にあたえる影響は少なくない。科学技術の発展と国際的な立場で問題解決をはかることが期待されている現状であればあるほど,後藤新平のもつ衛生観や抱負経倫はあらためて考えてみる価値があり,示唆されることの余りに大きいことを痛感している。本誌巻頭に「国家衛生原理」が抄出された意は,まさにここにあり,公衆衛生を推進する人が受けとめることのできる歴史的な遺産としてその価値をみのがすことができ調ない。国家衛生原理は1889年に出版され,1888年,大日本私立会衛生会雑誌第63号〜68号に掲載された職業衛生法と,1890年の衛生制度論とともに青年衛生行政官としての後藤新平の衛生観を知りうる貴重な3部作である。これら3部作の全貌について論述する余裕はないが,国家衛生原理は衛生制度論で指摘しているように,実際的な論究を行なったものでなく,衛生についての考え方,理調想を論じた著であるだけに,彼の衛生観を知るには貴重な資料であることは論をまたない。国家衛生原理には,衛生そのものについての考え方の側面と,国家そのものについての考え方の側面があるものと思う。
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