綜説
欧州における母子衛生
浅野 一雄
1
1厚生省児童局母子衛生課
pp.527-533
発行日 1960年10月15日
Published Date 1960/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202321
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私は昨年10月から本年5月まで世界保健機構(W・H・O)のフェローとして,イギリス,オランダ,西ドイツ,スエーデン,ノルウエーなどの国々の母子保健活動を視察する機会を得た。しかし,この間わずか7カ月ほどの旅行で,これらの国々における母子保健の現状をすべて知ることは困難であるが,これらヨーロッパ諸国における活動のあり方を比較対照することにより,かなりわれわれにも参考になることがある様に思われた。勿論,人口規模においても,社会機構においても,わが国のそれとことなるヨーロッパ諸国の施策をそのままわが国にもちこむことには問題はあるが,彼等の長所は長所として,いかにわが国の現状にマッチした形でとり入れていくか真剣に考えてみたいと思う。たとえば,イギリス,オランダ,スエーデンなどにおける母子保健所の完備,妊婦のExercises and Relaxation(一応,妊婦体操と訳しておく)の普及,合理的な分娩方式,乳幼児保健指導の徹底など,わが国の母子衛生改善のため当然とりあげていかなければならないと思う。また,わが国の妊産婦死亡率がイギリス,オランダ,スエーデン,ノルウエーなどの死亡率にくらべて2倍ないし3倍以上も高率であるという事実は,わが国における妊産婦対策の貧困とともに,やはり社会的レベルの低さが問題であろう。
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