文献
アルコール中毒の疫学的研究,他
芦沢
pp.318,328
発行日 1960年6月15日
Published Date 1960/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202284
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疫学的研究をはじめるのには,まず何よりも対象の概念規定をはつきりさせて主観的な偏りがしのびこまないようにしなければならない。アルコール中毒という概念についてもたとえば最近,Elmo Roperによつておこなわれたアメリカにおける質問調査において,酒癖常習者で仕事や人間関係に障害をおこしているような場合,病気としてよいという答が58%,病気ではなくして道徳的に弱いというのが35%,意見なしが7%という数字である。
アルコール中毒の疫学をすすめるための資料として,1)アルコール飲料消費量調査成績があるが,1946年のRileyおよびMardenの調査はすでに古く,世相も著しく変わつている今日,そのままは使えない。2)飲酒による犯罪,交通事故統計もあるが,前にのべたように酒癖の定義がまちまちなので地域どうしの比較には無理がある。1955年カリフォルニア州の交通災害統計では,運転者の全事故障害中,死亡事故のしめる割合は,「酒をのんでいた」の方が「のんでいなかつた」の2倍あつた。3)精神病院統計もある集団の「アルコール問題」の大いさをみる一つの手段となりうる。4)傷病による休業補債統計もひとつの手がかりにはなる災害の反覆の度合い,傷病の経過など。
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