特集 乳肉衛生
東京都の乳質改善対策の1例
北浦 弥太郎
1
1東京都衛生局獣医衛生課
pp.417-421
発行日 1959年7月15日
Published Date 1959/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202160
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
わが国における牛乳事情は,欧米に比べるとすでにその起源において大きな開きがある。古来米麦を中心とした食生活の伝統と,四ツ足禁制の仏教的タブーにはばまれてきたため,牛乳や食肉が漸く食膳に供されるようになつてから未だ半世紀余りしか経つていない。その生いたちもまた当初は薬餌的要求に応えての生産であつて,欧米のように古くから消費者自らが牛を飼つて,自らこれを食したのとは甚だその趣を異にしている。したがつて,その歴史も極めて浅いわが国の牛乳界は,生産,処理,販売および消費にわたつて,いずれも牛乳そのものの本質的認識に乏しいため,ともすると乳質を悪化させる結果となつている。
牛乳は今さらいうまでもなく,すべての必要栄養素を完備した最も優れた食品であるが,それだけに細菌類にとつてもまた最良の培養基となつて盛んに増殖する。低温度(少くとも10℃以下)に保持することが,細菌増殖を防ぐ唯一の手段であるが,未だ充分この知識すらない取扱者がいる。
Copyright © 1959, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.