特集 高血圧の疫学
高血圧診断の手技と方法論
簑島 高
1
1東京女子医科大学生理学
pp.136-137
発行日 1959年2月15日
Published Date 1959/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202099
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I.緒言
昭和33年1〜6月までの厚生省の死亡統計発表によると32年後期に比べて,癌と高血圧による死亡数が増加している。高血圧は血管の破裂,心冠状動脈栓塞,心筋の硬塞,脳卒中及び脳軟化症などの二次的の症状を惹き起し,早晩死の転帰をとらせる結果を招来する。ドイツのStrassburger(1907)は「人は血管と共に老いる」といつているが,今日わが国でもこの高血圧の問題が各方面から注目されつつあることは50才以上の学識,経験の豊かな年令層の力量を充分に利用する上において有意義のことと思う。総ての病気についていえることであるが,高血圧の場合でも,一旦高血圧になつた人を治療することよりは,これを予防することが必要であり,これには早期に高血圧傾向者を診断して発見するための診断の手技と方法が確立されることを要する。
高血圧の場合,まず第一に問題となるのは血圧の測定とこれによつて決定される高血圧の判定である。多くの医学者は正常血圧者と高血圧者との判定線を最高/最低=150/90に引いているが,他の学者は160/100ともいいあるいは又160/90と主張する人もある。他方に於て,男女別,地方別,季節別などの因子を考慮する必要もあり,劃一的に一線を引くことは困難であると思われる。しかし高血圧者のスクリーニングが予防的意義を持つとすれば,150/90を一応劃線とすることが無難であろう。
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