特集 原子力と公衆衛生
綜説
放射性廃棄物の処分
左合 正雄
1,2
1国立公衆衛生院
2東京大学
pp.17-21
発行日 1956年6月15日
Published Date 1956/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201689
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I.緒言
1942年にフエルミが原子核の連鎖反応に成功して以来,原子力は爆弾として我々の頭上に投下され,引続き行われている原水爆実験は死の灰,原爆マグロ,放射能雨として我々に非常な恐怖を与えている。然るに一方原子力の平和的利用も急速に発展し,昨年はこれに関する第1回の国際会議が開かれ,原子力は動力源として大きな期待がかけられるに至り,放射性同位元素の各方面への利用も目覚しく進展している。愈々我国もこの趨勢に対処する態勢を整え,実験用原子炉を設置せんとする段階に達したことは周知の通りである。
かくて今や原子力時代への推移は必至である。然し乍ら原子力を生産し,利用するところ必ず放射線を伴うから,その平和的利用に急な余り放射線に対する防護処置を怠るならば,人類は未だ嘗て見なかつた様な怖るべき惨禍を蒙るやも計り知れない。放射線の人体に及ぼす影響,人体に対する最大許容量も未だ余りはつきり判つていないが,特にその遣伝的影響は研究が進むにつれて憂慮される様になつて来ている。従つて我々は出来るだけ人体を放射線から防護するため,生活環境の放射性汚染を防止する方途を考究し,原子力工業の発展に即応して,原子力を人類の幸福に寄与させる様に努めなければならない。
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