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1954年米国で行われた小兒麻痺ワクチンの野外実驗成績
宮入 正人
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1国立公衆衞生院疫学部
pp.68-69
発行日 1955年7月15日
Published Date 1955/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201580
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過日報道された小兒麻痺に対する所謂Salkワクチンによる予防効果の示す成績は本症の予防に明るい見透しを与えたのみならず,我国における医学研究と,その実際的応用に多大の示唆を与えた。今回の野外実験を通じて参考とす可き二つの大きな点かある。その第一は本症の予防にワクチン有効論を想定せしめた本症のPathogenesisに関する諸研究,ワクチンの大量製造を可能ならしめるに到つた多くの業績,更に本症の疫学に関する諸知識等長期間に累積された基礎的研究の結晶がこの成績をもたらしめた事。第二にはこのワクチンを社会に生活しつつある人間集団を対象として行つた野外実験の方法論である。1953年に行つたγ-グロブリンによる予防効果判定実験の規模も米国ならではと思わせる大がかりなものであつたが,実験計画は必ずしも充分とは云えなかつた。今回のワクチンによる実験も,当初の計画には多少の混乱もあつた様であるが,如何なる批判にも耐え得たものは結局正攻法とも云う可き方法であつた。すなわち511州84地区の小学校の1,2及び3学年の学童計749,236名を対象とし各学年を切半し,ワクチン各1.0c.c.の筋内注射を0-1-5に3回完了した200,745名と又全く同様な注射方法で抗原性のない注射液(ゲラチン)を受けた201,229名を対照群(Placebo-Control)として注射後の兩群の罹患率を比較した。
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