座談会 補遺
1.外科,他
榊原 仟
pp.26-36
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201471
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肺臓外科の適応
肺結核はある時期には躍進するが,ある時期には大体進行を停止している。病勢が大体進行を停止している時期を狙つて適当な処置をすると次の躍進を押えることが出来る。肺結核は自然治癒を営み易いものであるから,斯る躍進を押えることが出来れば,遂に結核を治癒させることが出来る。外科療法は斯る目的のために行われるもので,内科的療法では躍進を押え得ないと予想せられる時に行われる。最も屡々問題となるのは結核性空洞で,手術によつてその転移源たる性格を失わせておくのである。空洞結核も自然治癒を営まぬ訳ではないが,一定の大きさに達した空洞は自然治癒を営み難く,その経過中に他に転移を起す可能性があるから,急速に空洞を消失させ得る可能性の大きな外科療法が選ばれる。更に,未だ崩壊空洞化するに至つていないような乾酪巣に対しても,同じ意味で手術を行う。従つて急性期に在る患者は手術しない,しかし以上の条件を備えた患者でもすべて手術し得る訳ではない。患者の全身状態,肺病変の様相に従つて自ら適応の限界がある。他の手術と同様,全身状態が手術を許さぬようなものは手術せぬ。特に呼吸,循環機能の低下したものは行い得ない。手術の対象としては1側の肺に変化があるものが望ましい。兩側に存する場合には,1側に対し手術を行つて後,更に他側に対しても手術を行いうる可能性のある場合だけに行う。即ち病変範囲ということが問題になる。
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