特集 赤痢(Ⅱ)
赤痢大流行史
宗像 文彦
1
1厚生省防疫課
pp.44-48
発行日 1954年8月15日
Published Date 1954/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201444
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赤痢は我が国に土着している伝染病の1つであつて,温湿な気候風土,日本人の食生活のあり方,日本式家屋の構造或は日本人の生活様式又は習慣等々,赤痢伝播乃至は流行に都合のよい条件が揃つているので,年々少なくない赤痢発生があることは,伝染病統計を見るまでもなく何人でも知つているのである。従つて赤痢の発生があつても,日本人の間では,さ程重大な事柄が起つたと考えないような心理状態があるのではなかろうか。現今我が国よりも高い水準の文化生活を享受している欧米各国では,赤痢のごときは起り得べからざる疾病であると考えているのに比べて,誠に残念な現象というべきである。
赤痢を伝染病の1つとして予防対策を講ずべきであるという考えは,明治13年に制定された伝染病予防規則の中に赤痢が伝染病として明記され,更にそれ以前明治8年大阪府死亡並に流行病取締規則にも取締対象となつている事実からすれば,制度としてはかなり古くから具体化されていたと云えよう。しかし赤痢が真に伝染するものであると考えられたのは明治の極く初期の頃であつて,それ以前は伝染病としての取扱は全く受けていなかつたのである。
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