衛生公衆衛生学史こぼれ話
47.大牟田の赤痢大流行
北 博正
1,2
1東京都環境科学研究所
2東京医科歯科大学
pp.107
発行日 1988年2月15日
Published Date 1988/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207619
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昭和12年(1937)9月25日(このとき筆者はすでに軍医として応召中)福岡県大牟田市において赤痢の爆発的大流行があり,終息時までに患者17,000名(推定),死者712名,当時の同市人口103,549の16.7%の患者が出た.これは1982年8月のハンブルグのコレラ大流行(患者数17,955)に匹敵する疫学史上の大記録である.この流行では疫痢様症状を呈する年少者の患者が多く,死亡者も同じ傾向を示した.
地元の火葬場は酷使のためパンクし,近隣の農家は便所の汲取り作業を拒否し,パニック状態に陥り,流言蜚語(デマ)が飛びかい,戦時中であったので,防諜上の必要から,県警察部の特高,刑事両課に憲兵隊も出動し,厳重な報導管制がしかれたといわれている.
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