論説
SOS! SOS!
石垣 純二
pp.2
発行日 1953年3月15日
Published Date 1953/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201176
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この間高知と岐阜の県会が衞生部の廃止を決議した,と思つたら島根や岩手にも,同じ動きが見られるという。悲報踵をついて至るという感じである,予期しないことではなかつたけれど,歴史の大きな齒車が逆にまわりはじめたのだ。文部大臣が議会で堂々と「世界中を相手にして四年間戦つたのだ。日本国民はもつと誇りを持たなければ――」といつた二,三年前なら,それだけで追放間違いないという暴言を平気で述べたてる時代が来たのだ。今にどんなことが起るか,この辺で十分私たちは覚悟をきめねばならないようだ。
こんど発表された行政整理の本多私案をみるとソ族昆虫の駆除や食品衞生をはじめとして,公衆衞生事業は軒並に槍玉にあがつている。要するに現代の政治家は,大して票にもならず儲かりもしない公衆衞生などには,何らの興味もないのだ。それは簡易水道予算一つを見てもわかる。今年のこの予算は一躍して三倍にも膨れ上つた。理由は簡単,去年水道をつくつてもらつた村の票の八割が,口を利いた代議士に出たからだ。今さらのように,靈験いやちこなのに驚いた連中が,こぞつて大蔵大臣をせつついたからだ。そして,東京の料亭は,陳情の町村長連の大群に埋まるという光景と相成つた。衞生部も厚生省もあつたものでない。郷土出身の自由党代議土への直訴なのである。簡易水道においてはじめて厚生省は,他の利権省なみに昇格したというべきであろう。
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