研究報告
蛔虫感染経路に関する研究(Ⅱ)—洪水後道路上に於ける蛔虫卵の消長に就いて
松崎 義周
1
,
今園 義盛
2
1横浜市立大学医学部寄生虫病学教室
2東京都立衞生研究所
pp.35-37
発行日 1953年2月15日
Published Date 1953/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201170
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緒言 洪水の被害の甚大なる事は今更申す迄もなく,特に市街地に於ける場合は惨害甚しく,時に汚染せる飲食物を介して伝染病流行の原因となる事があるので,防疫の見地からは常に重要視され種々対策が講ぜられて居る。市街地並に之に近接せる地域の洪水は,出水と同時に下水,汚水溜,家庭の便池或は糞尿溜が溢れ出,病原細菌は勿論之等に含まれている多量の腸内寄生虫卵も浸水地域全体を広く汚染する事は当然想像される処で,之等の虫卵は飲料水に浸入,或は飲食物食器等を汚染,又は手指衣服等に附着,其の他種々なる経路を経て,腸内寄生虫感染の原因となり得る可能性は充分考えられ,之等の事から洪水は寄生虫学的観点からも重要なる意義があるものと考えられる。
筆者はこの観点から昭和24年8月関東地方を襲つたキテイ台風の余波を受け浸水した東京都内住宅地域道路上の土壌,塵埃中に含まれる腸内寄生虫卵特に蛔虫卵に就いて,其の消長を観察したる処,興味ある成績を得たので茲に報告する。
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