資料
氣候馴應に關する基礎的研究
菊野 正隆
1
1應慶義塾大學醫學部衞生學教室
pp.95-101
発行日 1948年12月25日
Published Date 1948/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200385
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我々が高温環境に永く曝された場合,我々の體質に變化を受けるか否か,もし變化を受けるものとすればいかなるものであるか,とゆうことに疑問をいだき,熱帶地方の居住民について體質を調査した成績と,温帶地方住民の成績とを數多く集めて比較檢討した處1),2),熱地に永く居住してゐる者は副交感神經緊張亢進状態に傾くと考へられる結果が得られた。また原島教授も南方に於て植物神經機能檢査,血液成分の測定等を行つて同樣の結論を得た3)。また著者自身も臺灣に於て極く一部の熱地居住民についてではあるが,循環機能,血液像,エネルギー代謝等を觀察して,徐脈4),5)血圧下降6),7),エオジン嗜好性白血球の増加,比較的淋巴増多,基礎代謝値の低下,8)勞作時瓦斯代謝量の比較的低値,9),10)等上記の諸家の成績と同じ傾向を示す結果が得られた。
そこでこの熱地居住者が副交感神經緊張亢進状態に傾き易い傾向にあるとゆう事の本態を追及しようと考へて,先づ副交感神經の興奮の際に出現するアセチールコリンの量が該住民の體内に於て如何なる値を示すかといふことを測定しようと試みた。アセチールコリンの定量法は種々あるが,そのうち生物學的方法は化學的定量法よりも鋭敏であることは既にHunt及びTaaeau11)によつて實驗され,その他多くの研究者によつて摘出腸管をはじめ各種の標本が用ひられた。
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