論説
本誌創刊以後第三の新春を迎へて
野邊地 慶三
pp.1-2
発行日 1948年11月25日
Published Date 1948/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200364
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終戰後第四の新春が茲に迎い來つた。過去3年有餘の歳月の間に占領軍當局の支援の下,祖國日本の復興工作は好調に進展しつゝある。此の間我が醫事衞生の領域に於ては新憲法—第25條—の公布,中央及び地方衞生行政機構の改組充實,諸醫事衞生法制の改正整備,醫學教育制度の刷新振興等劃時代的の躍進が記録せられたことは獨り醫事衞生關係者のみならず,國民の等しく喜びとするところである。
太平洋の硝煙漸く治まつて國家再建の業その緒につき始めた昭和21年10月,本誌は新日本建設の原動力たるべき國民保健の増進に資することを目途として其の創刊を企てられたものであつた。爾來今日迄2ケ年の間衞生技術官を想定讀者層として堅實な歩みを續けて來たものである。然しながら國民保健の向上増進は數の限られた衞生技術者の活動だけによつては效果に限度がある。毎日數十の患者に接し患者及びその家族が眞劍に醫師の進言に耳を傾ける機會に惠まれて居る臨牀醫家が,この好機會を活用して衞生教育に意を用ふるに至れば國民保健の進運著しいものがあることが期待されるのである。30年の昔,米國の朝野は茲に思を致し醫學教育制度を刷新し臨牀醫家たらんとする者の公衆衞生の教育に力をいたすことになつたのであつた。我國の先般の醫學教育制度刷新はこれに倣つたものである。この新事態に應じて本誌は今後讀者層を臨牀醫家に擴大し,その公衆衞生教育を企圖し,以て國民保健向上の機運を促進し,新日本建設に資するところあらうとして居る。
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