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はじめに
化学的に合成された医薬品にはその合成に用いられる出発物質や試薬,反応中間体,反応副生成物,出発物質や試薬に含まれる不純物,保存中に生成する分解物などが不純物として混在しうる.化学合成医薬品の不純物に関するガイダンスとして,日・米・EUの三極で国際調和された日米EU医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use;ICH)Q3A/Q3B/Q3C1~3)がある.
ほとんどの不純物の安全性確認および管理については,ICH Q3A(R2):「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドライン」,およびQ3B(R2):「新有効成分含有医薬品のうち,製剤の不純物に関するガイドライン」によって指針が与えられている.また,原薬または医薬品添加物の製造工程あるいは製剤の製造工程で使用されるか生成する揮発性有機化学物質に関してはICH Q3C:「医薬品の残留溶媒ガイドライン」に安全性データに基づきその許容量が勧告されている.
一方,医薬品の有機不純物の中にはDNAと反応してDNAにダメージを与え,発がんリスクを高める可能性のある不純物がある.これらの不純物には発がん性のデータがないものが少なくなく,その発がん性を評価するためには時間を要する.また,DNAと反応してがんを引き起こす不純物の毒性発現には閾値がないと考えられていることから,不純物のレベルをどこまで下げるべきかについての明確な指針が必要となる.そこで,不純物の構造をもとにDNA反応性(変異原性)の評価を行い,変異原性があるとわかった不純物に対して発がん性不純物として管理するという戦略のもと,現在,発がんリスクを有する可能性のあるDNA反応性(変異原性)不純物の評価と管理に関するガイダンス(ICH M7ガイドライン)の制定に向けた作業が進められている.
本稿においては,ICH M7 step2文書4)に基づきガイドラインの要となる,毒性学的懸念の閾値(Thresholds of Toxicological Concern;TTC)に基づく安全とみなしうるレベルの設定,不純物が変異原性を有するかの評価,不純物の管理を中心に概説する.なお,本稿で述べた内容は今後のガイドライン制定作業において変更される可能性のあることを申し添える.
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