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はじめに
東日本大震災で被災された多くの方々に,心からお見舞い申し上げます.今回の大地震は,揺れによる被害だけでなく,大津波や原発事故など,いまだ復興の見通しの立たない大きな傷跡を残しています.大きな災害の後,被災された方々の心理的ストレスが徐々に表面化していく中,うつ病,PTSD(心的外傷後ストレス障害),心因性の各種疾患など,メンタルヘルスへの対応とともに,依存症へのケアも重要な問題として取り組まなければならなくなってきていると思います.
国立精神・神経医療研究センターや久里浜アルコール症センターなどでは,ホームページ上で震災と依存症の問題について言及されています.それによると,避難所での生活によって,自宅にいたときには隠されていたアルコール依存の問題が顕在化したり,過度なストレス状態の中で飲酒をすることによって感情が爆発しやすくなり,人間関係のトラブルや,心身を害する結果を招いたりすることがあると指摘されています.また,災害後,地域の飲酒量は全体的に増加し,また災害前から飲酒問題を持っていた人は,災害後に飲酒問題が悪化するとのエビデンスも報告されています.
実際,被災地では,精神病院が被害に遭い,依存症者の治療が継続できなくなったり,ミーティング場として使っていた会場が使えなくなり自助グループの活動が休止してしまった,などの事態も起こっています.依存症からの回復には,回復を支えてくれる仲間と繋がり続けることがとても大切です.震災後の過度のストレスの中,治療から離れ,仲間からも離れることで孤立することは,再発の危険信号です.また,依存症者を抱えている家族も,依存症の問題を後回しにし,相談機関や家族の自助グループ等と繋がりが切れてしまう状態は,とても危険なことです.
自ら被災しながらも,なお依存症者の回復を見守り,今も支援を続けている援助職の方々に,心より敬意を表します.そして,今後ますます被災地での心の問題が表面化していくと思われる中,依存症の回復支援に向けて,私たちも微力ながら,共に手を携えていけたらと思います.本稿では,私ども「全国薬物依存症者家族連合会」の活動について紹介させていただきます.
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