特集 健康危機兆候のモニタリング
地球温暖化が感染症に及ぼす影響―変化する感染症の早期探知に向けてのモニタリング
倉根 一郎
1
1国立感染症研究所
pp.538-541
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102159
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はじめに
気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental panel for climate change:IPCC)第4次報告書において,地球温暖化はすでに疑いのない事実であることが明確に述べられている.最も厳しいCO2削減努力を行っても,今後数十年間は地球温暖化を回避することができないと考えられている.したがって,今後も地球温暖化は長期間にわたり,人間の生活に大きな影響を及ぼし続けることが予想される.
地球温暖化によるヒトの健康への影響は多様である(表1).温暖化により直接的に現れる影響としては,呼吸器・循環器疾患等を有する人々の死亡率の増加,熱中症患者の増加や,それによる死亡数の増加が確認されている.一方,温暖化に伴う大規模自然災害(たとえば,大型台風やハリケーン,大雨による洪水,干ばつ等)による直接的な健康への影響,あるいはこれらの災害による生活のインフラ(注:infrastructureの略)の破壊による健康影響が現れることも予想される.このような直接的な影響とともに,ヒトの健康への間接的な影響として,感染症の増加や,地域的拡大,大気汚染との複合的な健康被害,アレルギー患者の増加や,患者発生の地域や時期の変化等,多面的な影響が考えられている1).
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