連載 世界の健康被害・5
3.11後,「内部被曝」の時代が始まった
鎌仲 ひとみ
1,2
1多摩美術大学
2国際基督教大学
pp.424-425
発行日 2011年5月15日
Published Date 2011/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102117
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原発震災
2011年3月11日,14時46分,渋谷の劇場で映画『ミツバチの羽音と地球の回転』を上映していた.突然の揺れに上映を中止し,観客を建物の外まで避難誘導した.揺れはなかなか収まらず震源地もよくわからなかった.30分後,テレビの画面にはとてつもない津波が家々を飲み込んでゆく映像が映し出された.まるでSF映画のようなその有様は現実だとすぐには認めたくない,しかしこれは現実だと,すさまじい葛藤が体内で起きてきた.そして原発はどうなったのか? 無事なのかどうかが頭に浮かんだ.まずい,これでは原発ももたないだろうとも.
すぐに福島第一原発の電源が喪失し,炉内の温度が上昇中というニュースが入ってきた.原発のことを少しでも勉強した人なら,誰でもこの意味が解る.炉心溶融の危機だ.原発の冷却機能が失われると,燃料が高温で溶けて炉の底を突き抜けて,大量の放射性物質を外部に放出する甚大な事故となる.原発の事故はある程度事態が悪化してしまうと,連鎖反応が加速度的に起きて止めることができなくなる.
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