特集 超高齢社会に備える
高齢者の社会的孤立とその予防戦略
藤原 佳典
1
1(地独)東京都健康長寿医療センター研究所
pp.281-284
発行日 2011年4月15日
Published Date 2011/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102076
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社会的孤立を取り巻く背景
近年,社会的孤立の終末像の一つとして高齢者の孤立死が注目されている.孤立死とは,社会から孤立した結果,死後,長期間放置されるような死を意味する.全国統計は存在しないが,東京都監察医務院のデータによれば,東京23区内における一人暮らしの65歳以上の自宅での死亡者数は,2002年の1,364人から2008年は2,211人と1.6倍に増加している.孤立死に至る背景には,貧困,健康問題をはじめ失業や離婚など,社会的な孤立を余儀なくされる状況を経る場合が多いことから,公衆衛生上の深刻な問題と言える.
一方,孤立死の発生により,その事後処理の経済的・人的負担,近隣住民相互の無力感・不信感が生じるなど,コミュニティ全体に及ぼす負の影響は大きい.国も地方公共団体とともに総合的な取り組みに着手し,2007年度から孤立死防止推進事業(「孤立死ゼロ・プロジェクト」)を推進してきた.その成果・指針は2008年3月に「高齢者等が一人でも安心して暮らせるコミュニティづくり推進会議(「孤立死」ゼロを目指して)」により報告された1).その中で,わが国においては,単身高齢者世帯や高齢者のみ世帯が急増しており,「孤立生活」はもはや特別な生活形態ではなく,標準的な生活形態であることを認識すべきとしている.
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