- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
看護師の経験するグリーフとは
エンド・オブ・ライフにある患者に全人的なケアを行う看護師は,患者と家族が死に向けてたどる苦難の過程でその予期悲嘆に寄り添い,死後も家族にケアを行っている.ことにホスピスや緩和ケア病棟では定期的な遺族会の開催や手紙を送るなど,看護師は遺された家族への継続的なケアにも中心的な役割を担っている.しかし看護師は基礎教育でも臨床の継続教育においてもグリーフケアに関する専門的なトレーニングをほとんど受けないまま1),求められるニーズに対応している現状がある.
患者や家族と築いた信頼関係や絆が強いほど,患者の死後に看護師はグリーフ(悲嘆)を経験する.しかし看護師には公に悲しみに浸る時間はなく,次に入院してくる患者や亡くなった患者と同様に,まさに死に向けて生きている患者と家族のケアに自身を投入していかなければならない.また,家族の経験とは異なり,看護師はその経験を短い期間に幾度となく繰り返し,積み重なるグリーフを経験する2).
多くの看護師は患者と家族の苦悩とともにあり,喪失とグリーフを経験しているが,悲しんでいる家族の前や患者が死を迎えたとき,看護師はその苦痛を抑え込んでしまう1).このような奪われるグリーフ(disenfranchised grief)は,看護師に特徴的なもので,オープンに認識されず,公的に悲しめず,社会的にサポートされない3).患者を失ったあとに,多くの看護師は解決やバランスを取り戻す感覚を得るが,幾人かは解決のないグリーフの道をたどり続けている2).このような累積するグリーフの結果として,新しい患者に感情を注ぐことへの躊躇やバーンアウト,感情疲労などが起こりうる.しかしグリーフが他者に受け止められ,適切な支援がされれば,自分自身を癒すことができ,より思いやり深いケア提供者になるとKaplanは述べている4).
© Nankodo Co., Ltd., 2019