連載 トラウマからの回復―患者の声が聞こえますか?・4
夢叶えても,レ・ミゼラブル!?
進藤 啓子
1
1NPO法人JUST(日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン)
pp.612-615
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101853
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2001年9月に,夫と2人だけの小さな一軒家のフレンチ・レストランをオープンしました.私が17歳の時に,アルバイト先で知り合った1歳年上の夫と夢みて,90年頃から本格的に計画を立て,97年に古民家を購入,その後3年間で開業資金を貯め,やっとの思いで開店に漕ぎ着けました.店は開店後すぐに雑誌で取り上げられ話題の店となり,私は幸せの絶頂にいました.
でも,その代償に,お客様の評価やマネジメントのプレッシャー,肉体疲労から精神的に不安定となり,夫とも喧嘩が絶えなくなりました.営業時間中からワインを飲むようになり,営業終了後も毎日ボトル1本以上を飲むアルコール依存状態になっていき,心身ともに衰弱していきました.不眠で04年10月に精神科に行き薬を処方してもらいましたが,「これじゃ治らない」という漠然とした不安がありました.その後,しばらくは多行動(仕事・スポーツ・語学・旅行等)で気を紛らわせますが,ますます症状は悪化し,息苦しさや窒息感,突然涙が溢れ出すなどのパニック症状も現れ始めました.言いようのない寂しさが襲ってきて,そして06年の2月にどうにもならなくなり,“底つき”状態になったのです.
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