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はじめに
日本肥満学会は2000年の東京宣言で「肥満」と「肥満症」とを区別し,疾患としての肥満症対策の重要性を提起した.2005年,日本内科学会等の内科系8学会が合同で,動脈硬化を促進し心血管疾患を惹起するハイリスクな肥満症として,メタボリックシンドロームの疾患概念とわが国独自の診断基準を示した1).翌2006年,日本肥満学会は肥満症・メタボリックシンドロームの予防の重要性を喚起する神戸宣言を発表し,食生活の改善と運動の増加により,3kgの減量,3cmのウエスト周囲径の短縮を目指す「サンサン運動」を提案した(表1)2).また同年,日本肥満学会は『肥満症治療ガイドライン2006』を作成・公表し,わが国における肥満症治療の標準的な指針を示した3).
最近の調査によれば,わが国では20歳以上において,メタボリックシンドロームが強く疑われる者の比率は男性25.3%,女性10.6%,予備群と考えられる者の比率は男性21.9%,女性8.3%である4).40~74歳で見ると,男性の2人に1人,女性の5人に1人がメタボリックシンドロームが強く疑われる者,または予備群と考えられ,その対策には医療関係者と行政の協力による公衆衛生学的立場に根差した戦略的なアプローチが不可欠である.2008年4月より,40歳以上の被保険者・被扶養者を対象とするメタボリックシンドロームに着目した健康診査および保健指導(いわゆる特定健診・保健指導)が全国で開始された.これをきっかけとして,わが国では急速にメタボリックシンドロームが人口に膾炙し,その医学的意義ならびに社会的意義に対する関心が高まった.
本稿では,『肥満症治療ガイドライン2006』の要点に触れつつ,肥満症治療の最前線についてまとめる.
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