特集 感染症再見
肺炎球菌感染症
和田 昭仁
1
1国立感染症研究所細菌部
pp.24-27
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101708
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肺炎球菌について
肺炎球菌は,小児,成人の上咽頭にコロナイズすることがある一方,呼吸器感染の主要な起炎菌であり,また中耳炎,菌血症/敗血症,髄膜炎の起炎菌としても重要である.肺炎球菌が持つ莢きょう膜まくは,最も重要な病原因子であり,莢膜を持つ肺炎球菌は,持たない菌に比べて著しく病原性が強いことが知られている1).これは,莢膜が主として白血球貪食抵抗因子として働くためである2).莢膜は多糖(ポリサッカライド)からなり,その抗原性の違いから91種類の型(遺伝子組み換えにより人工的に作り出した型を含めると92種類)に分類されている.それぞれの型に特異的な抗体を用いることにより,血清型別を行うことができる.図に,肺炎球菌とその型に特異的な血清を反応させた顕微鏡像を示す.黒く見えるのが菌体(実際には色素により青く染まっている),菌体を取り囲むように見えているのが莢膜と抗体の複合体である.通常は菌体周囲の莢膜を観察することはできないが,莢膜と抗体の複合体は,抗体と反応していない莢膜より高い屈折率を持つため,陽性反応ではこのような像が得られる.表に肺炎球菌の血清型を示す.Typeのカラムに記載した数字にはそれぞれ1種類の型,Groupのカラムに記載した数字には複数の型が含まれ,例えば19F,19A,19Bといったように数字と大文字のアルファベットでそれぞれの型を表す.
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