特集 うつの時代―うつ病を改めて理解する
最新のうつ病の概念
戸田 裕之
1
,
野村 総一郎
2
1自衛隊札幌病院精神科
2防衛医科大学校病院精神科学講座
pp.344-349
発行日 2008年5月15日
Published Date 2008/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101312
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近年,「うつ病」という言葉の認知は急速に広まっていると言えよう.本邦における自殺者数が毎年3万人を超える高水準で推移していることや,国際分類であるDSM-IV(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th ed)とICD-10(International Classification of Disease, Injuries, and Causes of Death, 10th Revision)において操作的診断分類が採用されていることと,うつ病の浸透とは無関係ではあるまい.一方で,その概念が不十分なままに流布し,うつ病の理解が表面的なものに留まっており,社会的な混乱を少なからず引き起こしていることも紛れもない事実であろう.
本稿では,躁うつ病の概念を初めて確立したKraeperin以降の概念について解説を加えた後に,現在主流となっているDSM-IVとICD-10によるうつ病について述べる.また,近年話題になっている「逃避型抑うつ」や「未熟型うつ病」「現代型うつ病」も紹介し,さらには,現時点で判明しているうつ病の生物学的な病態についての簡単な説明も加え,うつ病の概念の包括的な解説を試みた.なお,筆者らに与えられたテーマは最新の「うつ病」の概念についてであるが,DSM-IVとICD-10ではうつ病は気分障害の下位項目に分類されており,うつ病を理解するためには他の気分障害の理解も不可欠である.故に,うつ病を中心にしながらも,気分障害全体についても論じている.
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