連載 地域における自殺対策の新展開―自殺は予防できる・1【新連載】
秋田県の自殺対策
本橋 豊
1
1秋田大学医学部社会環境医学講座健康増進医学分野
pp.306-309
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101303
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秋田県の自殺の現状―平成19年6月の自殺統計の衝撃
平成18年の秋田県の自殺者数は前年度と比べて35人増の482人であり,人口10万人あたり42.7であった.働き盛りの50歳代の自殺が多く,75歳以上の高齢者が多いのが秋田県の特徴である.秋田県の自殺率は都道府県別に見ると最も高く,平成7年以来12年連続ワーストワンの記録を更新している.平成18年の自殺者数が隣県の青森県では大きく減少したこともあり,秋田県の自殺対策は効果がなかったのではないかという新聞報道もなされた.官民挙げて取り組んできたにもかかわらず,減少が見られないという事実に対する苛立ちが,新聞報道には感じられた.しかし,実際に自殺対策の現場にいる関係者のすべてが,このような悲観的な考えにとらわれていた訳ではない.
自殺対策の効果が本当にあるのかどうかは,自殺率の長期的変動を観察する必要がある.1年ごとの自殺率の数字は様々な要因により変動しており,1年ごとの数字の増減より長期的なトレンドを見る必要があるのである.秋田県の自殺率の長期的トレンドを見ると,本格的な県の自殺予防対策が開始された平成13年から,長期的には緩やかな減少傾向を示していると判断される.したがって,秋田県の自殺対策は効果がなかったという主張は正しくない.短期的な数字の変動に動揺することなく,地域において地道な対策を継続していくことこそ,自殺対策の本道であると言うべきである.
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