特集 医療制度改革と疾病予防活動
医療制度改革と保険者機能―疾病予防活動の取り組み
一圓 光彌
1
1関西大学経済学部
pp.848-851
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100674
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医療保険と予防重視
医療保険は,われわれが病気になったときに医療費の心配なく安心して医療が受けられるように備える制度である.人々の重大なリスクに対処する上で,保険は非常に合理的な仕組みである.そして,このような意味での保険の合理性さえ発揮できればいい時代には,保険者は,しっかりと保険料を徴収し,確実に医療機関に診療報酬を支払い,被保険者に給付を行い,安定的に保険を運営し,被保険者からも医療提供者からも信頼される制度を維持することが重要で,それさえできれば保険者としての機能は十分に果たせた.
しかし,前世紀の後半を通して,各国で医療保障制度が整備され,十分な医療財源が確保されるようになるに伴い,医療供給体制も整備され,いつでもどこでも医師にかかることのできる環境が整うようになると,医療費全体をコントロールする必要性が生まれた.それとともに,疾病構造も感染症中心から慢性疾患中心に変わり,後者では,医療が人々の生活の一部分として定着するようになった.被保険者は,月々保険料を支払いながら,同時に毎月医師にかかって医療給付を受けるような状態が珍しくなくなった.医療リスクは,生活を危機に陥れるある日突然の短期的な事故から,日々の生活の中で継続してコントロールするような事態にと,大きく変わるようになった.
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