特集 公衆衛生対策におけるクライシスコミュニケーション
感染症対策とコミュニケーションストラテジー
五味 晴美
1
1南トリノイ大学感染症科
pp.598-601
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100438
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1980年代のHIVの出現,90年代のアフリカ大陸でのエボラ熱のアウトブレイク,2001年の米国での炭疽菌によるバイオテロリズムの現実化,2002年のSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)の世界規模でのアウトブレイクなど,近年,世界のグローバリゼーションに伴う感染症,公衆衛生問題が,続発している.ヒトやモノの移動が飛行機で短時間で可能になり,情報はデジタル化され,瞬時にインターネットで全世界に流れる時代になった.このような時代では,ひとりひとりの個人(individual)のみならず,何万,何百万人もの「集団」(population)の健康を守る全世界規模の公衆衛生(global public health)の考え方が,必須となりつつある.Global public healthの実現,構築には,その根幹である,正確な情報の収集,情報の解釈,情報の応用,情報の伝達が不可欠である.
本稿では,オリジナルデータや論文を用いた科学的な分析や提言ではなく,筆者が個人として,日本で,実際に情報を流す側になって観察し,学び,経験したこと,さらに米国で観察した状況などを報告するという形で,global public healthの構築に際し,今後日本に必要と思われる戦略的な情報還元,コミュニケーションストラテジー(communication strategy),リスクコミュニケーション(risk communication)について提案したい.
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