連載 赤いコートの女―女性ホームレス物語・5
関医師とM保健師
宮下 忠子
1,2,3
1元東京都城北福祉センター
2元東京都精神保健センターアルコール問題家族教育プログラム
3現コミュニティワーカー制度を考える会
pp.78-80
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100017
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波さんの生活
相変わらず赤いコートに身を包んだ波さんが,手を振っていた.某ビル1階は,洋品店やパーラー,おもちゃ屋,装飾店,ラーメン屋,蕎麦屋等が立ち並び,何となく時間潰しにぶらつくだけでも飽きない.波さんは毎日,この一角に腰を下ろして,道行く人々を楽しそうに眺めている.
私は波さんの手招きに引き込まれるように近づいていった.いつものパーラーに腰をすえると,波さんはオレンジジュースを,私はコーヒーを飲んだ.いつも食べるのは好物のラーメンや辛口のカレーライスであった.波さんは,1日1食しか食べていないという.ボランティアの炊き出しの日にも余程欠食が続いていない限り,長い行列に並んで食べ物をもらうことはない.その割には,余りやせてはいない.男相手に酒やつまみにありつくこともあるという.周りからの差し入れで,何とか体を維持できている様子であった.
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