特集 リカバリー時代の精神症状論 どうやって「その人」を見ながら?
—捉え方が変われば支援が変わる—「わかっちゃいるけど、やめられない、とまらない」という精神症状を「依存症」から「アディクション」へ
松本 俊彦
1
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部
pp.32-37
発行日 2025年1月15日
Published Date 2025/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134327610280010032
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“依存症”への疑問
30年近く前、私はジャンケンに負けて依存症専門病院に赴任した。不本意な赴任ではあったが、それでもそこそこの好奇心と野心を持っていた私は、自分なりに「依存症という現象」を理解しようと努め、患者が精神作用物質に足を取られ、巻き込まれ、支配されていくさまを丁寧に聞き取り、依存症という疾病概念を理解しようと努めた。
しかし、わりと早い段階で、「なんだかこれはおかしいぞ」と、依存症の診断基準や疾病概念に疑いを抱くようになった。なぜそのことを他の依存症専門医は声高に主張しないのかとさえ訝しんだ。いまならその理由はわかる。
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