連載 2025のシェヘラザードたち 第10夜
ライン確保—麻酔科医の真骨頂とプライド
八木原 正浩
1
1浜松医科大学医学部附属病院 麻酔科蘇生科
pp.99-102
発行日 2025年1月1日
Published Date 2025/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134088360320010099
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われわれ麻酔科医の仕事,見せ場はさまざまある。術前評価,麻酔計画,ライン確保,気管挿管,区域麻酔,経食道心エコー,輸液管理,術中術後鎮痛,質の高い麻酔覚醒,考えればきりがない。ただし,ライン確保以上に麻酔科医が重要視すべきことはないと考える。どんなに優れた麻酔薬,血管作動薬,麻酔計画も,ラインが確保できないと始まらないのだから。そこで今晩は,私の経験をふまえてこの基本的な手技を振り返りたい。
末梢静脈ライン,動脈ライン,中心静脈ラインなど,常日頃行う手技であるが,その多くは麻酔導入時に行われる。これらは外科医や手術室看護師に注視されるため,彼らの評価に直結する。つまり麻酔時間のほとんどが,手術を裏から支える役割であるわれわれが最も輝く時間なのである。洗練された手技で,素早く高確率にライン確保を行う麻酔科医は周囲の評価が上がり,信頼を得るとともに,麻酔科医としてのプライドを自負できるのである。麻酔科医になって24年目になるが,末梢静脈ラインの確保でさえ,成功すると今でも幸せを感じる。
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