わたしの大切な作業・第83回
準備が未来をつくる
工藤 公康
pp.211
発行日 2025年3月15日
Published Date 2025/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590030211
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選手の時も監督の時も、そして今も、私は“準備”を大切にしている。例えば現役時代、私は対戦する打者の映像やデータを何度も見ては、「どう打ち取るか」と配球を組み立て、常にシミュレーションをしていた。1番から9番打者の攻め方、ランナーの有無やシチュエーションを設定し、頭の中で対戦。最後の最後まで準備を欠かさなかった。監督時代も変わらない。対戦チームの直近の試合内容、調子が良い選手や、点を取るとき、取られる時のパターンや傾向、使えるデータや情報を全て駆使し、毎試合臨んでいた。どんな状況になっても“想定内”と思うために、何パターンものシミュレーションを重ねる。「どうにかなる、なんとかなる」では、成果や結果を出し続けることはできない。一瞬一瞬が決断の連続であるプロ野球という世界で戦っていくために、そういった準備が何よりも大事だと感じている。
監督の途中から、私はそういった準備やシミュレーションをスケッチブックに書き出すようになった。頭の整理ができ、より明確に、今自分が何をすべきかが見えてくる。試合の準備だけではない。選手の育成、コミュニケーションの取り方、コーチとの計画や取り決めなど、スケッチブックに自分の言葉や図として書くことで、道筋や方向性が定まっていく。
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