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さる2025年10月23日(木)・24日(金)の2日間,第70回日本音声言語医学会総会・学術講演会を,神戸国際会議場にて開催させていただきました。今回の大会テーマは,「言葉で伝える 想いが伝わる」といたしました。音声・言語によるコミュニケーションは,単なる情報伝達ツールにとどまらず,私たちの感情や想いを共有するためのかけがえのない手段です。本大会では,インプットとアウトプットの両側面から,音声と言語の多様な機能と意義について,基礎・臨床・研究・教育の各視点を交えて,幅広く議論を深めていただきました。特別企画としては,初日午前にInternational Association of Communication Sciences and Disorders(IALP)のBrian B. Shulman前会長をお招きし,国際セッションを企画しました。音声言語・コミュニケーション障害に関する国際的な最新の知見と課題を共有する貴重な機会となりました。続いて初日午後には,歴代会長にご登壇いただき「創立70周年記念式典」を開催。2日目お昼の特別講演では,高知大学の柿木章伸先生の旧友であり,吃音を克服されたご経験を持つローランド金田氏(金田吉弘 尾道市吉和公民館長)をお招きし,「プロレス中継のアナウンスを真似ることで吃音を乗り越えた体験」を語っていただきました。これまで吃音の音声治療では「言葉を言い換える」ことは「吃音からの逃げ」であり,「避けるべき行為」と見做されてきました。しかし,古舘伊知郎ばりのスピードでプロレス中継の練習をするうちに圧倒的なボキャブラリーを獲得し,発語しにくい言葉を逐次話しやすい言葉に言い換えることで,吃音を克服されたとのこと。吃音を「治す」のではなく,対応能力を身につけて克服するという新しい治療法の可能性を語っていただきました。
さて,今月号の特集は「なかなか治らない厄介な咳」です。ぜひエキスパートの皆様の解説を通読し,「厄介な咳」に対する新たな治療法を身につけてください。

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