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はじめに
甲状腺全摘出術の後遺症の1つに副甲状腺機能低下症がある。甲状腺全摘出術後に一時的な副甲状腺機能低下症が起こる割合は6.9〜46%とされている。また,永続的な副甲状腺機能低下症が起こる割合は0〜6.6%といわれている1)。永続的な副甲状腺機能低下症はカルシウム製剤や活性型ビタミンD製剤の永続的な内服につながり2),死亡率の上昇や生活の質の低下,心血管・腎臓・神経・筋骨格系の合併症をきたす可能性があり,避けなければならない後遺症である1,3)。
術中に副甲状腺を同定する方法としては,術者による肉眼的同定法が主体となるが,インドシアニングリーン(ICG)やメチレンブルーを用いた染色を用いた同定法4,5),術中血清intact PTH(iPTH)の測定を用いた同定法5,6),術中迅速病理診断を用いた同定法5,6)などがある。副甲状腺はサイズや形,色,位置などがさまざまであり甲状腺や周囲の脂肪織,リンパ節と類似する場合があるため,肉眼的同定法は術者の力量に左右されることが多い3,4)。またICGやメチレンブルーを用いた染色は薬剤投与が必要となるため侵襲的であり,アレルギー反応を起こす可能性があること,術中血清iPTHの測定や術中迅速病理診断は測定や結果が出るまでにある程度の時間を要するなどの問題点がある5)。
ORBEYE®(オリンパス社)とは,主に脳神経外科領域の手術時に使用される高精細な4K3Dモニターを用いた外視鏡である。通常光での観察に加え,NBI(narrow band imaging),IR(infra-red),BL(blue light)のモード選択が可能である。すべての観察モードにおいて焦点距離は220〜550mmとなっている7)。
われわれはORBEYE®が導入されて以来,良性・悪性を問わず甲状腺全摘出術を行う際にIR観察モードを用いた副甲状腺の同定を試みている。甲状腺全摘出術時の副甲状腺温存において,ORBEYE®の有用性が示唆されたため,若干の文献的考察を加えてここに報告する。
Hypoparathyroidism is a complication following total thyroidectomy that may be prevented. Recently, it was discovered that parathyroid glands emit autofluorescence in the near-infrared region, and methods for identifying parathyroid glands using near-infrared observation systems have been reported. We used the IR imaging mode of ORBEYE® to identify the parathyroid glands in total thyroidectomy. In all patients who used ORBEYE®, intact PTH recovered to within normal limits by postoperative day 90, although there were a few cases of transient postoperative hypoparathyroidism. These results suggest that confirmation with ORBEYE® is beneficial for parathyroids preservation.
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