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60巻3号の「今月の主題」は「食道の炎症性疾患—逆流性食道炎を除く」である.最近,食道扁平上皮癌だけでなく,Barrett腺癌も本邦で増加し,食道は十二指腸とともに注目の臓器である.以前は食道の非腫瘍性疾患と言えば逆流性食道炎,食道カンジダ症,薬剤や化学薬品による腐食性食道炎,そして食道静脈瘤であった.「胃と腸」誌は1966年に創刊され,なんと59年,半世紀以上が過ぎた.最初に非腫瘍性の食道疾患が主題として取り上げられたのは7巻10号(1972年10月発行)「食道炎と食道静脈瘤」で,木暮喬先生の「食道炎の診断と経過—病理組織と対比した内視鏡診断基準」と遠藤光夫先生の「逆流性食道炎の内視鏡診断」が主題として掲載されているが,原発性食道炎や非特異性食道炎と言った診断名が使われており,内容はどちらかと言えば術後食道炎に関するものが主である.その後,10年以上が経過し,18巻11号(1983年11月発行)で主題として「逆流性食道炎」が初めて取り上げられ,逆流性食道炎の診断と発生病態が論じられた.その後,食道疾患に関しては食道扁平上皮癌に関するものが続き,34巻8号(1999年7月)に「逆流性食道炎—分類・診断・治療」として,逆流性食道炎が増加してきたこともあり,いよいよ本格的に逆流性食道炎が「胃と腸」誌で地位を得たと思われたが,Barrett腺癌は登場するものの,次に登場するのは46巻8号(2011年7月発刊)「食道の炎症性疾患」である.この号では逆流性食道炎を中心として,ヘルペス,サイトメガロウイルス,カンジダなどによる感染性食道炎,Crohn病の食道病変,そしていよいよ,木下芳一先生が「食道炎の内視鏡診断—好酸球性食道炎」を執筆され,「胃と腸」誌における好酸球性食道炎の幕開けである.米国消化器病週間でおそらく初めて好酸球性食道炎の主題が組まれたとき,木下先生と一緒に聴講した.その後,木下先生は好酸球性食道炎に積極的に取り組まれ,島根大学を好酸球性食道炎の中心地とされた.筆者も好酸球性食道炎を探してみたがなかなか出会うことなく,自己体験がないとテーマとしては取り組めず,本格的に取り組むにはかなりの年月を要した.ちなみに,この46巻8号をみると,「Helicobacter pylori感染と逆流性食道炎」として筆者が執筆しており,かなり奥手であった.その後,53巻3号(2018年3月発刊)でついに主題として「好酸球性食道炎の診断と治療」が取り上げられ,筆者も序説を書くまでに成長した.このときに好酸球性食道炎の推移をみる目的で,医中誌とPubMedで検索し提示したが,さらに好酸球性食道炎の報告は増加しつつある(Fig.1).その後,ほぼ7年が経過し,今回の主題「食道の炎症性疾患—逆流性食道炎を除く」で,逆流性食道炎を除いても特集が組めるようになった.
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