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特集 健康生成の考え方とサルトグラフィ
主体性と回復を捉え直すレジリエンス概念
A Resilience Concept that Reframes Agency and Recovery
平野 真理
1
Mari Hirano
1
1お茶の水女子大学生活科学部心理学科
1Ochanomizu University, Tokyo, Japan
キーワード:
レジリエンス
,
resilience
,
回復
,
recovery
,
適応
,
adaptation
,
主体性
,
agency
Keyword:
レジリエンス
,
resilience
,
回復
,
recovery
,
適応
,
adaptation
,
主体性
,
agency
pp.1440-1444
発行日 2025年11月15日
Published Date 2025/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810670111440
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抄録
本稿では,レジリエンス概念の歴史的展開と臨床的意義について論じた。レジリエンス研究は,発達心理学における逆境下で適応する子どもの能力を探る研究から出発し,その後,成人・高齢者・災害被災者など幅広い対象へと拡大した。縦断的研究や神経生物学的視点を含む多様な研究アプローチの蓄積を通じて,レジリエンスは固定的特性ではなく,状況や時期に応じて変化する動的プロセスとして理解されるようになり,生物・心理・社会モデルの中で再定義されてきた。臨床においては,工学的レジリエンスに加え,生態学的レジリエンスの視点を取り入れることで,不可逆的な発症を含む精神科領域に有用な示唆が得られる。病理中心モデルから強み重視への転換や,症状寛解にとどまらず生き方の質的変化を伴う適応を「回復」として評価する視点は,患者の主体性回復や既存治療の意味づけの再構築に資するものである。

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