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はじめに
ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded:FFPE)から抽出されたDNAの品質は“DNAの断片化”に左右される.病理検体の場合は検体摘出からホルマリンに浸漬するまでの時間,固定時間,ホルマリンの種類などがDNAの断片化に影響を与え,ゲノム解析結果の品質を左右することが明らかとなっている.DNAの品質の指標はΔCT値やDIN(DNA integrity number)がある〔2章「核酸(DNA,RNA)の取り扱い 核酸品質確認(ΔCT,DIN,A260/A280)」を参照〕.
DINはDNAの断片化を数値化したものである.数値10が最も質がよく,長い状態のDNAであり,DNAが短く断片化するにつれて数値が小さくなる.日本病理学会の「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」1)(以下,規程)には,このDINが2.3以上のDNAであれば,ゲノム解析成功率は70%であったと記されている.実際に検査の現場でシークエンスを行っていると,DINが3.0以上であればほぼ問題なくライブラリーを構築でき,ゲノム解析は成功している.DINが高値であるほどPCR産物濃度,構築できるライブラリー濃度が高値となる.一方,DINが低値の場合は,PCR産物濃度,構築できるライブラリー濃度が低値となり,ゲノム解析が困難となる(図1).
規程に従って作製したゲノム検査用FFPE検体と,病理診断用に作製されたアーカイブFFPE検体のDNA品質(DIN,濃度)とゲノム解析成功率,ゲノム解析を成功させるための条件を知ることで,がんゲノム検査の成功率を向上させることができる.
本稿は文献2)で筆者が報告した内容を基にして,FFPE作製条件の違いによるDNA品質(DNA)とゲノム解析成功率の比較について解説する.

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