増大号 超実践! 病理で迫るがんゲノム医療—検査から治療まで
はじめに
柳田 絵美衣
pp.1027
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048514200690101027
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
がんゲノム医療は,がんの本質に迫る分子レベルでの診断と個別化治療の実現を目指して近年,著しい発展を遂げてきました.2019年の保険収載以降,がん遺伝子パネル(comprehensive genomic profiling:CGP)検査やコンパニオン診断(companion diagnostics:CDx)の外部委託件数は急増し,わが国においても多くの医療機関で日常的に実施されるようになり,専門的な用語を基礎から学ぶために2020年に増刊号「がんゲノム医療用語事典」(64巻10号)を発行しました.その後,数年が経過しましたが,病理検査室において実際にどのような検体処理や対応が求められているのか,また臨床検査技師がどのように業務に関与しているのかといった具体的な実務情報については,依然として十分に共有されているとは言い難い状況にあります.
特に病理検査の現場においては,固定・包埋・切片作製・品質管理といった検体前処理のいわゆる“Wet”なプロセスや,検査後のデータ解析を含むバイオインフォマティクス領域など,通常の病理診断とは異なる視点や知識が求められます.こうした領域は,日常の業務だけでは体系的に習得することが難しい場合も多く,確かな実務知識と経験の共有が,がんゲノム医療の質の向上に直結すると考えられます.

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.