総特集 これだけは押さえておきたい 鼠径部ヘルニア手術—組織修復法からロボット手術まで
扉
長浜 雄志
1
1九段坂病院 外科
pp.125
発行日 2025年2月20日
Published Date 2025/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800020125
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鼠径部ヘルニアに対する外科手術はこの40年で大きな変化を遂げた.Bassini法やMcVay法を中心とした組織修復法のみであったヘルニア治療は,メッシュ,腹腔鏡下手術の導入,最近ではロボット支援下ヘルニア修復術の導入により,さまざまな治療法から選択可能な状況になっている.近年導入された術式は,術後再発の防止や術後疼痛の軽減などに優れた特徴をもっているが,ヘルニアの病態は多彩であり,それぞれの術式の特長や短所を認識しておかないと患者の病態に応じた適切な術式選択は困難である.標準術式として選択されることの少なくなった組織修復法も,患者の年齢や状態,また使用可能な医療資源の状況により依然として重要な選択肢であり,腹腔鏡下手術やロボット支援手術と同様にマスターすべき術式である.
外科治療はとかく新しく導入されるものに対して注目が集まることが多く,それまで積み重ねられてきた伝統的な手技に対する関心は薄くなりがちである.鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡下修復法が鼠径部切開法を症例数で上回る現在,組織修復法に限らず鼠径部切開法すら経験したことがないという外科医が散見されるようになっている.昭和時代に外科の扉をたたいた者としては,令和時代の外科医に,最新のロボット手術だけでなく古典的とされる手術も修得したうえで,それぞれの術式の特性を理解し治療に当たっていただきたいと切望する.
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