連載 新型コロナウイルス感染症のパンデミックをめぐる資料、記録、記憶の保全と継承—「何を、誰が、どう残すか」を考える・9
COVID-19データアーカイブの可能性と課題
後藤 真
1
,
橋本 雄太
1
1人間文化研究機構国立歴史民俗博物館
pp.815-818
発行日 2025年9月15日
Published Date 2025/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.036851870890090815
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はじめに
本稿では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するデータアーカイブを目指して実験的に構築された「COVID-19デジタルアーカイブ」(以下、「本システム」)の概要、目的、課題を紹介する。筆者らは、現在進めている科学研究費「COVID-19のパンデミックへの歴史学的「介入」—歴史化のための記録と記憶の保全」(代表:飯島渉)における研究プロジェクトの中で、COVID-19に関するアーカイブを作成している。このデータアーカイブは、COVID-19の当初より直面していた同時代の資料をいかに残すかという課題に対し、デジタルデータによる保存を試みるべく、実験的に構築しようとするものである。
本システムでは、公文書など紙資料だけでなく、博物館に収蔵されるようなモノ資料、風景などの動画や音声資料など、多岐にわたる包括的なアーカイブを試みている(図1)。ただし、ウェブ上の言説やSNSデータの収集は主たる対象とはしていない(URL等のリンクのみ収集可能)。このアーカイブシステムは、現在非公開での実験的なものとして位置付けられている。その上で、多様な資料情報を入れてみて、全体的な課題を析出し、その課題を社会に示すことで、最終的な公開アーカイブシステムの作成を手助けするものとして位置付けているためである。

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