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はじめに
糖尿病は代表的な慢性疾患であり,長期にわたって患者自身が主体的に療養行動を継続することが求められる.食事療法や運動療法,薬物療法など多岐にわたる治療があり,いずれも患者の自己管理なくしては十分な効果を発揮しない.そのため,糖尿病の治療においては医学的介入とともに患者教育が不可欠であることが古くから強調されてきた.“糖尿病診療の父”として知られるエリオット・ジョスリン医師は「糖尿病の患者教育は治療の一部として極めて重要である」と述べており1),これは現代においても変わらぬ原則である.日本糖尿病学会や米国糖尿病学会においても,自己管理教育と療養支援が糖尿病治療の根幹を成すことが明記されている2).すなわち,糖尿病教育は単なる知識の伝達にとどまらず,患者が自らの生活のなかに療養行動を取り入れ,持続可能な形で実行できることを目的としている.
糖尿病教育に含まれる内容は幅広く,糖尿病の病態や合併症に関する基礎知識,食事療法・運動療法・薬物療法の実際,インスリン自己注射や血糖自己測定の方法,低血糖やシックデイの知識取得とその対応,フットケア,さらには日常生活における注意点など多岐にわたる.これらを包括的に学ぶ場として,教育入院は重要な役割を果たしている.教育入院では,医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士など多職種がチームを組み,系統的かつ実践的な教育を提供することが可能である.短期間に集中して学習することによって患者の動機付けを高め,療養行動を自らの生活に落とし込む契機となる点が特徴である.
本稿では,教育入院の対象者の選定から,多職種による教育体制のなかで臨床検査技師が果たす役割について詳述する.特に,糖尿病に関連した検査の意義を患者に理解してもらい,それをセルフケアに役立て,さらに継続的に維持していく支援の重要性に焦点を当てる.

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