特集 肺炎の診断・診療エクセレンス
特集にあたって
石丸 直人
1
1明石医療センター総合内科
pp.2188-2189
発行日 2025年12月10日
Published Date 2025/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002576990620132188
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突然ですが,皆さんはラブレターを書いたことがありますか.今の時代はメッセージなどで済ますことが多いと思います.下駄箱にあるラブレターを見てドキドキする時代は過ぎ去り,今の高校生の世代では,リアルで会っていないのにSNSで愛の告白をすることもあるそうです.大切な人に何度も文章を考えてラブレターを書いた体験には,甘酸っぱい思いやほろ苦い気持ちが残っているかもしれません.それは医療者にとっては大切な患者の症例報告を書く経験とも似ているかもしれません.
皆さんは,医療者人生のなかで印象深い患者さんはいますか.私にも印象に残っている患者さんがいます.レジオネラ肺炎になった青年で,詳しい病歴聴取の結果,彼は湯の華を自宅の風呂に入れ,風呂水を変えずに使用していたことがわかり,これが診断のきっかけになりました.尿中抗原では診断できなかったため,自宅の風呂水を持ってきてもらい,本人の尿や痰,血液検体とともに,近隣の大学病院の微生物学教室のご協力の下でPCR検査を行い,診断にたどり着きました.重症肺炎に加え心筋炎も発症しましたが,治癒し,日常生活に戻られました.継続して関わるなかで,易感染性の上流に低IgG血症が,その上流に亜鉛欠乏が,その上流に偏食がありました.抑うつ症状や引きこもり,肥満,睡眠時無呼吸症候群も併存しており,その背景に父親との葛藤といった家族内力動がありました.家庭医としてほかの専門家も交えて関わるなかで,抑うつ症状も改善し,減量にも成功し,持続陽圧呼吸療法(CPAP)治療も不要となり,家族を前にしても自信をもって応対できるようになり,引きこもりからも回復されました.

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