日本看護科学会誌 7巻1号 (1987年9月発行)

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総説

看護領域の用語に関する研究中西　睦子 7巻1号 , 1987年9月 , pp.2-17

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はじめに

　わが国では，研究に対する看護婦の関心が高まって以来，およそ20年の歳月が経過しているが，この間，経験的データの蓄積はあっても，理論構築に関する研究は少なく，したがって理論用語に関する検討もごくまれにあるのみで^37～40)，種々の用語の使い方も個々の研究者の恣意に委ねられているのが現状である．看護領域でのさまざまな研究を方向づけ，かつその結果を累積的に集大成する努力という点では，わが国の看護研究の現状は，アメリカとは大きくへだたっているように思える．しかしそのアメリカにおいても，看護の領域で用いられている用語の多くは，まだ概念的統一をみるにはいたっていない．ただし異なる点は，多様な見解がうち出されているところにある．

　看護は科学的発達段階としてみれば，プレパラダイムのステージにあり，同一現象であっても異なった仕方で眺められたり解釈される．それは混乱とフラストレーションの時期ともいわれる²⁴⁾．看護における科学的研究の目標は，究極的には，看護が扱う現象を説明し，さらにその現象を望ましい方向に変えていくところにあるとするなら，看護が扱う現象の見方にかかわる理論的作業も，経験的データの蓄積とともに重要である．用語に関する検討は，そのためのひとつの基礎的作業として位置づけられる．

　本研究の目的は，看護における諸研究の出発点となり，帰結点ともなるようないくつかの基本的用語について，これまでの理論的検討を概観し，対象とされる事象の概念化の過程に存在する問題点を明らかにするところにある．これまでになされた理論的検討という点では，結果としてほとんど全面的にアメリカの文献に頼った．

　選択した用語は，1)看護理論(nursing theory)，2)看護の概念枠組(conceptual framework for nursing)，3)看護研究(nursing research)，4)看護科学(nursing science)，5)看護学(the discipline of nursing)の5つである．おのおのの用語は，(1)既存の定義，または特徴についての記述，(2)展望および概念化の過程での問題点から捉えていく．

原著

特別養護老人ホーム入所者の生活時間構造および24時間心拍数変動神田　清子 , 瀬戸　正子 , 正田　美智子 7巻1号 , 1987年9月 , pp.18-28

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要旨

　特別養護老人ホーム入所者の身体活動水準を知るために，入所者30名(年齢66～92歳，男性11名，女性19名)を移動能力別に3群(A群：独歩，B群：車椅子，C群：寝たきり)に分類し，1．日常生活時間調査および2．胸部双極誘導心電図による24時間連続心拍数を指標として各群を比較した．

　その結果，1)日常生活時間の使い方は，3群ともに休養・くつろぎの時間が約7時間30分～12時間30分で睡眠時間を除く一日の大半を占めていた．身体運動は0～4分であり顕著にすくなかった．2)24時間における平均心拍数は，男性が63～69拍/分，女性が66～73拍/分であり，男性・女性の各群間では有意差が認められず，独歩群の活動量の不足が指摘された．また，睡眠時の平均心拍数に対する覚醒時の平均心拍数の増加率は，約11～18.3％であり，活動時間帯の身体活動が全体的に低いことが明らかになった．心拍数を増加させた日常生活行動は，体位変換，食事動作などであった．

　以上のことから，特別養護老人ホーム入所者の活動水準は全体的に低く，特に，ADLの自立している独歩群(A群)にたいして，活動性を高めるための援助の必要性が示唆された．

産婦のストレスの緩和に対するTOUCHの影響新道　幸恵 , 近藤　潤子 7巻1号 , 1987年9月 , pp.28-37

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要旨

　産痛や不安などによってストレスを受けている産婦に対しては，ストレスの原困となる刺激を減少させるようなケアを行い，産婦の平衡状態を維持，回復することが必要である．そこで，日常の看護活動に用いられている「触れる」「さする」「圧迫する」などのtouchは，ストレスを受けている産婦に対するケアとして有効で有るか否かを明らかにすることを目的に，次のような方法によって本研究を行った．

　横浜市近郊の産婦人科医院で妊産婦管理を受けている初産婦25名を対象とし，そのうち15名にtouch操作を加え(実験群)，他の10名にはtouch操作を加えなかった(対照群)．分娩中の産婦の反応のうち，表情・動作・音声の調子，脈波数，上腕筋群の緊張を，VTR，生体情報測定用ポリグラフを用いて観察し，実験群と対照群の産婦の反応を比較検討した．

　その結果，touchによって産婦のストレスは緩和されており，産婦のケアへのtouchの有効性が示された．